現代人の不安と焦燥を掻き立てる「悲劇的」。全く新しいマーラー像の出現。
ゲルギエフのロンドン響首席指揮者就任記念、マーラー交響曲シリーズ第1弾となった名盤。なにかに追われるようにひたすら突進する第1楽章。マーラー屈指の麻薬的な美が凝縮した第2楽章アンダンテでさえも、けっして完全なる陶酔を約束してはくれず、フィナーレにいたっては「断末魔の叫び」にも似て崩壊寸前までさらに加速度を増してゆきます。この一見あまりに無謀かのように思える速すぎるテンポ設定こそ、ゲルギエフがマーラーの内包する神経症的側面をえぐり出し、現代に生きる不安と焦燥を掻き立て呈示するための必然的選択だったのではないかと思えてくるのです。
交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
ロンドン交響楽団
録音:2007年11月22日バービカンホール、ロンドン
(ライヴ)
原盤:LSO Live Ⓟ2008
国内発売旧CD:KKGC.1(LSO.0661)(SACD Hybrid) レコ芸特選