kingjヴァイオリニスト木嶋真優 ニューアルバム「seasons」への想い
木嶋真優
8年ぶりのレコーディング。
今までの音楽人生で深く心に刻まれたレコーディングとなりました。
今年は外出もままならず
四季を感じられなかった特別な一年間。
大切にしたかったのは
自然の美しさや壮大さだけでなく
人間の手には委ねられない厳しさや
自然から生まれる雑音。
予期しない、自然に起こる情景に
音を重ねながら進めていきました。
目の前で紡ぎ出されているような世界を表現したく
楽譜に書かれている以外の自然の音、
四季の移り変わる自然と共に歩んでいく中で
即興的に生まれた音、全て残しました。
音を重ねながら、この素晴らしい音の渦の真ん中に身を置けて
私は今なんて幸せなのだろうと思いながらこのレコーディングの瞬間を過ごしました。
私は自分の音を『残す』ことが
正直あまり好きではありませんでした。
消えて無くなること、
生きている音楽=コンサート
だと思っていたからです。
でも今回は
今の私の全てが詰まった作品になりました。
私の大好きな「恋するフォーチュンクッキー」も入れました。
弾きながら愛が溢れました。
好きな曲を好きな人達と好きな人を思い浮かべて弾けるなんて
なんて贅沢なヲタク時間なのでしょう。
そして今回使わせて頂いているヴァイオリンは、《Stradivarius Ex Walner》
ストラディバリウスは輝かしく明るいと言われていますが
ヨーロッパの明るさは底抜けに明るいわけでありません。
美しいだけはなく文化に根付いた土臭い部分、
明るさの中にも少し影があるような、混雑した陰影のある音。
厳しい冬でも
最後はまた巡り来る春への希望を持って終わります。
是非皆様に何度も何度も
私と一緒に巡り来る四季を過ごして頂きたいと思っています。
2020年12月 木嶋真優