信長貴富 編曲
山田和樹 指揮　東京混声合唱団　
日本フィルハーモニー交響楽団
斎木ユリ(ピアノ)他

●2018年から2020年にかけて録音された世紀の大プロジェクト「山田和樹アンセム・プロジェクト」から、作曲界の俊英・信長貴富によるアンセム・メドレーをCD2枚に集約。
●島々のうた～ヨーロッパ大陸Ⅰ～大航海時代～アメリカ大陸～アフリカ大陸～ヨーロッパ大陸Ⅱ～シルクロードという七つのテーマから編み出された、美しくも楽しい、信長貴富渾身の合唱曲です。
●旅ができない今こそ、七つの音楽を通して世界旅行をお楽しみください。
●信長貴富：アンセム・メドレー楽譜集（全音楽譜出版）同時発売！

信長貴富（のぶながたかとみ）PROFILE
1994年上智大学文学部教育学科卒業。1994・95・99年朝日作曲賞（合唱曲）、1998年奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第１位、2000年現音作曲新人賞入選（室内楽曲）、2001年日本音楽コンクール作曲部門（室内楽曲）第２位などを受賞。多数の合唱曲のほかに、歌曲、器楽作品など多岐にわたる。「信長貴富歌曲集」、「こどものためのピアノ曲集 スタートダッシュ」ほか出版多数。近年ではオーケストラや器楽アンサンブルを伴う合唱作品や、合唱のためのシアターピースも多く手がけている。
［主な作品］
《子どもたちの遺言 〜童声合唱と管弦楽のためのオラトリオ〜》
《奏楽 〜混声合唱と吹奏楽のための〜》
《あたしとあなた 〜女声合唱と弦楽四重奏のための〜》
《新しい歌》（混声／男声合唱）
《あの日の空の詩 〜合唱のためのシアターピース〜》
《Fragments 〜特攻隊戦死者の手記による〜》（歌曲／合唱曲）
《わが高校時代の犯罪》（歌曲）
《エレジアコ・エレキテル》（室内楽曲）
《種を蒔く人》（マリンバ＋ピアノ）
《マリンバ協奏曲 混線するドルフィン・ソナー》

信長貴富より
7つのメドレー制作ノート、そして新たな時代へ
メドレーを制作するにあたって最初に私がおこなった作業は、世界地図をいくつかのグループに分けることでした。シンプルに五大陸に分ける方法がまず容易に思い浮かぶわけですが、音楽作品として物語性を持ったメドレーにしたいと考えるに至り、独自のグループ分けを含みつつ7つのカテゴリー（「島々のうた」「ヨーロッパ大陸Ⅰ」「ヨーロッパ大陸Ⅱ」「大航海時代」「アメリカ大陸」「アフリカ大陸」「シルクロード」）を考案しました。
歴史的な時間軸で地球を眺めると、国境線というものがいかに流動的なものであるか気付かされます。人間は移動し、交流し、混血し、言語は混ざり合い、新しい言葉が生まれ、時に消滅します。世界地図は絶対不変なものではないし、国境によって人々が分断されているというイメージは、ある意味フィクションであるとさえ言えるでしょう。
各メドレーはそれぞれ10分前後の作品ですが、その約10分の中にドラマがあります。二次元の世界地図から解放され、時間的・空間的に「動く」イメージを持たせたいというのが私の狙いでした。
今、これら7つのメドレーの制作中には思いもよらなかったパンデミックの時代を、私たちは経験しています。新規感染症の出現が人類の歴史の流れを大きく変えてきた事例は古くから見られ、私たち現代人もその歴史の一部を生きているのだと言えるでしょう。歴史を紐解けば、「新大陸」における先住社会の滅亡にヨーロッパ由来の病原体が関与していたとされる例や、交通の発達（シルクロードや大航海）がペストの流行をもたらし中世ヨーロッパ社会を終焉させたとする説があり、人間の営為の拡大のすぐとなりに感染症が存在し、その克服を繰り返してきたことが分かります。一方で、ペスト後のヨーロッパにルネサンスが興ったように、「コロナ後」の世界に新たな価値創造が芽生えるかも知れない、あるいは既にその芽生えの中にいるのではないか、そんな期待も私の中にあります。当初からアンセム・プロジェクトはオリンピック・イヤーに向けて「うたで世界をつなぐ」という旗を掲げ制作が進められてきました。その平和への祈りとともに、いま世界的困難に直面する中で、ともに生きることの根源的価値に目を向けるための一里塚として、このCDが広く皆さんの手に届くことを願っています。