楽興の時 ~ペーター・レーゼル ピアノ小品集

ペーター・レーゼル

KIGC-18
2015.06.03 RELEASE クラシック 協奏曲 / KIGC-18 ¥3,520(tax in)

名匠、ペーター・レーゼルの新しい魅力。初のピアノ小品集。伝説の録音会場、ドレスデン ルカ教会における最新録音。

録音:2015年3月9日~11日 ドレスデン ルカ教会 DSDレコーディング
SACDハイブリッド仕様(CDプレーヤーでの再生可能)SACDエリアは、
ステレオ(2ch)とマルチチャンネル(5.0ch)でお楽しみいただけます。
【収録曲目】
1. J.S.バッハ:ガヴォット ト長調(フランス組曲第5番より)
2. モーツァルト:トルコ風(ピアノ・ソナタK.331より)
3. ベートーヴェン:バガテル「エリーゼのために」
4. ベートーヴェン:ロンド ハ長調 作品51-1
5. ショパン:ワルツ イ短調 作品34,2
6. メンデルスゾーン:春の歌(無言歌集より)
7. グリーグ:小人の行進(抒情小品集 第5集より)
8. グリーグ:ノクターン(抒情小品集 第5集より)
9. シューマン:トロイメライ(子供の情景より)
10. シューマン:見知らぬ国と人々について(子供の情景より)
11. チャイコフスキー:舟歌(四季より)
12. チャイコフスキー:ユーモレスク 作品10-2
13.シューベルト:即興曲 変イ長調 D935,2
14.シューベルト:楽興の時 第3番 ヘ短調 D780,3
15.ウェーバー:舞踏への勧誘 作品65
16.ラフマニノフ:楽興の時 第5番 変ニ長調 作品16,5
17. レクオーナ:コルドバ(スペイン組曲「アンダルシア」より)
18. レクオーナ:マラゲーニャ(スペイン組曲「アンダルシア」より)
19. シチェドリン:ユーモレスク
凛と美しい円熟のきわみ                 

立ち姿の美しい──しかし、穏やかな微笑みにもウィットのひらめく語り口。
自然に聴き手を惹きこんでやまない音楽だ。
聴いていると身体がふわっとリラックスしながら、耳は心地良く澄んでゆくような‥‥。
 ペーター・レーゼルの音楽は、飾らない。しかしそれでいて、
なんと豊かな時間が生まれることだろう。凛と美しい円熟のきわみにある芸術家だからこそ可能な、
絶妙なシンプル。この透明感とあたたかみは、
深い知性と情感のバランスに優れた名匠ならではだ。

ペーター・レーゼルについて
1945年2月2日ドレスデン生まれ、6歳でピアノをはじめウェーバー音楽院で研鑽を積んだレーゼルは、
やがてモスクワ音楽院に留学、ロシアの名匠たちの薫陶も受けた。ドイツ伝統のピアニズムを継承した
造形美とともに、重厚濃密な情感にも明晰を磨くロシア・ピアニズムの系譜も息づいたレーゼルの表現は、
高い表現技巧に澄んで揺るぎない芯と深い詩情の強さ‥‥
旧東ドイツの音楽界を担う才能として、国内外でのコンサートはもちろん
多数のレコーディングで活躍してきた。
 とはいえ東独を拠点としていたこともあって、
レーゼルの名声が日本に轟くまでは長い時が必要だった。
派手な喝采に華美で応えるような種類の芸術ではなかったのも、
地味な敬愛にとどまりつづけていた一因だろうか。
2007年、なんと日本では30年ぶりとなるソロ・リサイタルが絶賛を浴び、
ピアノ愛好家にあらためて〈巨匠レーゼル〉の存在感が熱く響きはじめた。
オーケストラで共演したある音楽家が「まさに〈選ばれし音楽家〉」と
感嘆を洩らしたのをきいたことがあるけれど、知性と情感の緻密な‥‥
そして気高く誠実な美しさは、日本でもあらためて注目を浴びることになった。
 2008年から2011年にかけて、東京の紀尾井ホールで全4期8公演に及ぶ
〈ペーター・レーゼル ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全曲演奏会〉がおこなわれ、
並行して全曲録音も実現。さらに2013年からは、名匠の本拠地ドレスデンの素晴らしいオーケストラと共に
〈モーツァルト:ピアノ協奏曲集〉シリーズの録音もスタートした。
光と遊び、澄んだ風に生命力を響かせるような至福のモーツァルト‥‥
素晴らしい円熟が心地良い時間を響かせる新録音の数々には、感謝あるのみだ。
                             
山野雄大(音楽ライター)